変革の継続とは
個人が変わり、組織が変わっても、往々にして環境の変化や日々の忙しさによって、その変化は薄れ、元の姿に戻ってしまう。組織文化、企業風土には正解は無い。個人が成長し、姿を変えていくように企業も成長やその時代、環境に応じて、適切に文化、風土を変革していく事が必要になってくる。 では、組織文化、企業風土変革の継続とは何か。
一つは、組織を支える人をどうしていくか、という人事制度、評価制度をどう設計・運用していくかが上げられる。
どんなに個々が主体性を持って自分の職務を果たした所で、それが全く組織の評価とリンクしないのであれば、いずれモチベーションを落とし、会社に対しての帰属意識も無くなってしまう。その状況を改善するために、成果主義という名の元に、短期的な結果のみを求める評価制度を採用する企業も増えているが、その結果、長期的な展望を会社と共に出来ないまま個々は疲弊し、結果として人が育たない風土となり、企業自身の成長が止まってしまっている例も多くみられる。
そういった現状に問題意識を持ち、評価制度を変えたいというご相談を頂き、既存の評価制度の変更をお手伝いするという機会があった。
評価制度の問題点
その会社は中規模の開発会社で、既にCCIとのお付き合いも長く、弊社の考え方については良く理解して頂いている。評価制度の何が問題なのかとお尋ねした所、「評価の納得性を高めるために、目標管理制度と絶対評価を導入したのだが、納得性が全く高まらず困っている。むしろ以前より悪くなったように感じられる。」との事。
「被評価者は自分では、A評価に値すると感じており、その通り、自己評価も行なっている。しかし端から見ていると、その成果は会社にはなんら貢献していない。それでは評価出来ないと調整が入り、その結果として、被評価者は正当に評価されていないという思いを持ってしまっている。」
さらに詳しく今の制度の状況と、運用の実態に伺っていくと、以下の2つの問題が明確になってきた。
(1)目標設定の曖昧さ
本来目標に上げられたものは、それを達成する事で会社の業績、成果に貢献するものでなくてはならない。しかしこの会社で設定されている目標は、資格の取得や、教育を受ける、といった個人の成長に結び付くだけのものであった。
(2)絶対評価基準の不明確さ
絶対評価とは、自分自身が100の結果を出せば、100として評価出来る評価制度である。しかし、そもそもその100が個々によって全く違っていれば、それは意味を無さない。この会社でも一次評価者、二次評価者間で基準が揃っていないため、最終的に評価結果が変わってしま
い、被評価者が納得感を得られていなかった。
「目標設定」「基準作り」
CCIでは極論を言えば評価というのは機械的に行なってしまっても問題無いと考えている。全員の納得の出来る基準があれば、評価は基準との比較で出来てしまうからだ。
問題は「評価」なのではなく、その前にある「目標設定」「基準作り」にある。 期初に目標を立てる段階で、会社の今期業績目標を達成するための、部門が上げるべき成果と手段、部署が上げるべき成果と手段、個人が上げるべき成果と手段、がブレイクダウンされていれば、自ずと自分が何を為し、どのような結果を出すべきかが明確になる。
しかし、他社などでも話を伺っていると、「何をやるべきか」は個人に任されており、「幾ら結果を出すのか」という業績「数値」目標を因数分解した解のみが個人に与えられている事が多い。
これでは、極端な話、同僚や上司の成果を奪ってでも自分の数値だけ達成すれば良い、という考えに陥ってしまう。
肝心なのは、結果だけでなく、「何のために、どのようにして、結果を出すのか」というビジョン・目的をブレイクダウンし、伝えていく事にある。
この考えが明確に伝わっていれば、先に上げた「資格の取得」や「教育の受講」は結果を出すための手段であり、それだけでは評価に値しない事は自ずと明らかになる。
PDCサイクルの必要性
上記のCCIの考え方を先方の担当者に伝えた所、すんなり納得して頂けた。「しかし、現在は業務と評価が乖離している。業務の展開が早くなってきており、プロジェクト単位で業務を遂行しているために、年間3回も4回も上司が変わる人もいる。そのような中で評価は年1回しか行なわれないので、期初に立てた目標がまるで役に立たなくなっています。」そのような状況の中、目標設定、評価については面談が設定されているものの、その事自体を評価者が負担に感じているような状況であった。
そのため、評価制度変更についてのコンサルテーションは、評価者に対して、企業ビジョンを自分自身の部門ビジョン、部署ビジョンに落とし込む段階からスタートした。
一番の変更点は評価の期間である。プロジェクト単位で業務が進んでいく形態の中で、年間での評価を行なうのは無理がある。プロジェクト事の目標設定と評価というPDCサイクルをきちんと回していく事の必要性を伝えていく事とした。
当初の参加者は日々の忙しさの中で新たな負荷をかけられる事に抵抗を感じていたが、「評価」が日常の業務から切離されている現在を改善し、日々の業務と評価を一体化させる事が自分達自身を楽にし、納得して業務遂行にあたれる事に気付いてからは、積極的に参画してもらえるようになった。
制度自体の見直しへ
同時に、現在の制度自体の見直しも進めていった。今迄の制度は、評価者が負荷と感じており、そのため人事部門に事細かに基準を作るように要請が上がってきた。
「こういったものを用意して評価してもらっている。」といって見せて頂いた評価基準書は、総計で数十ページにも及んでいた。「日々変化する環境の中で、作った基準はその瞬間から古くなってしまう。また、基準はその業務を良く分かっている、直接関わっている担当者が作らない限り、結局使えないものになってしまう。」と、こちらの考え方を伝え、基準作りも改める事となった。
その結果、一度全ての基準を捨てさり、基本はその部門、部署でコンセンサスを得た基準で運用していく事となった。全社の中での基準については、運用していく中で、評価者から「これはこれからの我社を考えた時に全社にとって必要だ」と感じられた基準を提案してもらい、それを協議し、決定していく事とした。
最終的に相対評価の基準となる部門評価についても、従来は単なる数字の比較であったが、それでは全員の納得が得られないために、評価会議を設け、個々が自分の評価と根拠を持ちより、討議して決定していくスタイルに変更していく事となった。
このような形で評価制度の変革は進み、最終的には目標設定に使う帳票類の作成の後に、実際の運用に進む事になっている。
