ビジョンがない

ビジョンがない。

コンサルテーションとしてお手伝いをさせて頂く際に、「うちの会社にはビジョンがない」という問題を伺う事が多い。
ビジョンという言葉は色々な所で耳にし、自身でも良く使っているが、改めて辞書で意味を調べてみた。ウェブの辞書で検索すると、以下のような意味だそうだ。

ビジョン [vision]
(1)将来の見通し。構想。未来像。「福祉国家の―を示す」
(2)幻想。幻影。
(3)視覚。視野。

当然、「うちの会社のビジョン」が指しているのは、(1)の意味である。

しかし、将来の見通し、構想の無い企業・組織・個人は存在しないのではないか。
どんな企業であれ、経営理念や中期経営計画、事業計画といった将来の構想を持っている。

では、なぜ「ビジョンがない」という問題が出てきてしまうのか。
実はビジョンが無いのではなく、それぞれのビジョンの合致する点が見出せない事がその奧にある問題である。

企業・組織にとってのビジョン、すなわち経営理念や事業計画は、「誰にとっての」将来の構想なのか。
売上を上げ、利益を得て、企業を存続させていかなくては、その企業・組織に属する個人にとっての将来は無い。すなわち、その個人の将来の構想を実現する機会と密接に結び付いている。
しかし、その事実が、実感として経営層から現場一般社員まで一気通貫して共有出来ている組織は少ない。

どんなに精緻に組み立てられた事業計画でも、その達成と自分自身の将来の構想との結び付きが見出せなくては自分にとっての価値はない。
自分にとって価値が無いビジョンは、結局無いも同然である。
そこで「ビジョンがない」という問題が出てくる。

非常に根が深い問題のようだが、案外スムーズに解決する事も多い。
今「ビジョンがない」と感じている組織で自分が働いているのは、自分自身での選択と決断の結果だ。
その選択、決断の基準は何だったのか。自分はこの組織でどうなりたいと思っていたのか。
その企業・組織が自分自身の将来の構想の実現に合致しているからこそ、この組織に自分がいる。
その決断した想いを思い出し、言葉にし、同じ組織で働く仲間と共有する事で、「自分の将来の構想とは関係無い」と思っていた思い込みは消えていく。

コンサルテーションを進めていく中で、「ビジョンがない」と一番組織を糾弾していた方が、自分の想いを語り、仲間の想いを聴き、最後に経営陣の覚悟を聴く事で、観方を180度変えていった場面を何度も見てきた。

「ビジョンがない」事は問題ではない。
「ビジョンを語り、共有する場が無い」事こそが本当の問題なのだ。