価値を産み出すための葛藤

全くタイプの違うプロの音楽家と食事をご一緒する機会がたて続けにあった。
お一人はロック、お一人はクラシックと正反対のジャンルで活躍されている。

最初にお会いしたのは、マスミサイルというロックバンドのボーカルの高木芳基さん。
彼は、某著名バンドに衝撃を受けて、バンド活動を始めたそうだ。
ところが、メジャーデビューをしようという直前にある人から
「貴方のバンドを聴くんだったら○○の音楽を聴けば充分だね」
と言われてひどく悩んだという。
好きだからこそ自然とスタイルは似てしまう。
一方で先駆者と同じスタイルをではいつまでも代用品のポジションを抜け出せない。
それに気づいた高木さんは、苦労して独自のスタイルを確立した。
これは正に企業におけるブルーオーシャン戦略に通じる。
一定の評価を得た今も、更に新しいスタイルに挑戦しようとしている。

次にお会いしたのはソプラノ歌手である岡本佳織さん。
彼女はもともと演劇、それもアンダーグラウンドの世界に夢中になり、演劇人としての道を目指していた。そのため、クラシックという「正統派」の世界に身を置きながらも、よりアバンギャルドなものへの思いを強く持たれている。
その中でも美輪明宏のステージなどから、シャンソンの「歌の世界を表現しつくす」ことに強く魅かれていたそうだ。
ところが最近になって、アバンギャルドの価値は認めながらも、改めて正統派の「強さ」や「凄み」というのを感じ始め、改めてご自身の「音」に向かい合っている。
正統派が正統派たらんとするためには、絶えまない革新の連続が必要だということなのだろう。

音楽に関しては全くの素人の私だが、お二人の話は非常に魅力的だった。
様々な事象と真面目に対峙し葛藤していることが共通して感じられたからだ。
もっと器用に生きることも出来ただろう。
もっと論理的に割り切ることも出来ただろう。
だが、自分のやりたいことに正直に立ち向かっているからこそ、感動が産まれるのだ。

最近、企業との関わりの中で痛感する事があった。
内面に葛藤を持たないリーダーや組織は実に弱い。
上司・株主などの外圧を感じた瞬間に歩みが止まってしまう。
私は、中間管理職が良く感じている「上と下の板ばさみ」は「悩み」であっても「葛藤」ではないと思っている。
板ばさみの中でも、自分のやりたいことを貫くために戦う時に生じるのものこそが「葛藤」なのだ。


さて、

私達は、人に影響を与えるほどに、自分自身は「葛藤」に対峙しているだろうか?
単なる「悩み」で終わっていないだろうか?
お二人の音楽家にお会いして、そんなことを感じた。

written by H