代理店組織の改革・発展を考察 ~組織変革のプロに聞く~

新日本保険新聞記事

2008年7月28日発行の新日本保険新聞 に、弊社コンサルタント平尾貴治のインタビュー記事が掲載されました。

代理店組織の改革・発展を考察 ~組織変革のプロに聞く~

「新日本保険新聞」2008年7月28日 掲載

代理店が抱える大きな課題の1つに、いかに経営者と社員一人ひとりの目指すべき方向性を意思統一させるかということが挙げられる。
いわゆるベクトル合わせだ。

(株)シー・シー・アイ(東京都港区)は企業の経営活動、組織運営、人材活性化のあり方などをコンサルティングする組織変革プロフェッショナルの会社。
これまでに保険会社はもとよりさまざまな業種、組織のコンサルティングや研修の実績を積み上げてきた。
ここでは同社の平尾貴治氏に組織変革のあり方や組織運営に関する代理店特有の課題・改善策などについて聞いた。

組織の目的を明確に

変化に応じた組織改革を

―まず保険代理店をはじめとした企業や組織が発展するために必要だと思われる考え方について教えてください。

私たちが企業や組織の発展のために提唱している考え方はODC(オーガナイゼーション・ディベロップメント・アンド・チェンジ)つまり「組織開発と変革」という分野にもとづくものです。
要するに、その時代に本当に必要とされる組織になるための活性化と変革のお手伝いをさせていただくのが私たちの義務と言えます。
ODCを考えるにあたり重要なのは、単に組織内部に見える問題点に着手すればよいわけではないということです。
まずその時々の社会情勢や自分たちの置かれている環境変化を捉え、その上で組織が本当に目指すべきことは何なのかを明確にしたうえで、組織変革にかかるという一連の流れを踏む必要があります。

―その流れを具体的に。

組織は少なからず社会とかかわって存在しています。
つまり組織運営および組織変革に当たっては社会の変化を考える必要があり、私たちはこれをインプットと称しています。
インプットはマクロとミクロの両面で考える必要があります。
例えば、昨今の保険業界におけるマクロ的なインプットとしては少子高齢化やコンプライアンスの徹底を望む消費者の声などが考えられます。
もう少し掘り下げると、業界内での競争激化による相次ぐ代理店合併も業界特有の変化、つまりインプットといえます。
一方、ミクロ的なインプットとしては経営者が変わったとか社員の生活環境が変わったなどの社員個々の変化が考えられます。
良い人材の採用が難しくなってきたということもミクロ的なインプットといえます。

―インプットの次にすべきことは。

アウトプットを明確化することです。
アウトプットとは自分たちを取り巻く変化つまりインプットを踏まえたうえで組織が生み出すものです。
組織として業績を上げることもアウトプットにあたりますし、社員一人ひとりが営業面での達成感を得ることや生活を安定させることも重要なアウトプットといえます。
もっと広い考えでは、自分たちの組織を社会的価値のある業態にしたいというのも立派なアウトプットです。
ともすると従来はアウトプットを企業の業績だけで捉えがちでしたが、そこからコンプライアンスやメンタルヘルスの問題が出ているのはご承知のとおりでしょう。
また、同じアウトプットを出し続けようと思ってもインプットが都度、変わりますから同じ結果を出すには自分たちもその都度、変わらなければなりません。
つまり組織体の変革です。
そして、この変革こそがODCの指す部分なのです。

―組織の変革について細かく。

組織内にはいくつかのサブシステムが存在しています。
1つはテクノロジカルサブシステム。例えば働く場所や環境、機材・システムといった技術的な部分です。
2つめはマネジメントサブシステム。
これは社内での評価制度や指示系統のあり方です。
そして3つめがヒューマンサブシステム。
社内でどのようなコミュニケーションをとっているか、また社員のモチベーションなどがここに属します。
さらに、こうしたサブシステムに大きく影響を及ぼす「組織風土」というものも存在しています。
以上のような組織内のサブシステムと組織風土を、総合的に捉えながら、目指すアウトプットとインプットの変化から見て変革のポイントを探り、手を打っていくことが必要です。

―組織運営にあたっては、まずコミュニケーションをとることが重要だと考える人が多いと思いますが。

コミュニケーションは目的達成のために非常に重要な要素であることは間違いありません。
反面、コミュニケーションといえども前述したサブシステムの1つに過ぎないものだと捉えることも必要です。
以前に私が相談に乗った企業でこんな例がありました。
ある若手社員が「社内のコミュニケーションをよくしたい。
そうでないと皆のモチベーションも低いままだ。それを一生懸命、経営者に訴えかけているのにまったく理解を示してくれない」とこぼしていました。
一方でこの経営者の考え方は、業界全体が不景気のなかで会社が利益を出すには事業所を拡大しなければならないというものでした。
そのためにも、まずはそこに経費や労力を費やすべきで、社員間でのコミュニケーションが大事なのはわかっているが最優先事項ではないという考えです。

経営者の責務は社員のビジョンを引き出すこと

―ここにどのような問題が。

これでは両者が理解しあえることはありません。
なぜなら、経営者は会社の状況(インプット)、目的(アウトプット)、方策(サブシステム)のすべてを踏まえて一定の考え方を示しています。
一方、若手社員はコミュニケーションやモチベーションといったサブシステムのことしか頭にありません。これでは経営者に思いが伝わるはずがありません。
この社員がすべきことは、業況をあげるためになぜこれらが必要なのかをきちんと伝えることです。
それでようやく話し合いのステージが整います。

―逆に経営者が社員にすべきことは。

社員のアウトプットつまり何を目指すかなどを引き出してあげることです。
総じて若い世代は視点が狭くなりがちですし、価値観をぶつけ合うようなコミュニケーションに慣れていません。
しかし、話してみると意外に「社会の中でどのように価値を発揮するか」といったビジョンに飢えているのです。
経営者は彼らを理解することに努めてあげなければいけません。
ですから、経営者に必要なことは、第一に、自分たちが業績を伸ばすことでどれだけ社会に貢献できるか、そして社員個々人の成長感にどうつながるのか、といった大きなビジョンを社員に伝えてあげることでしょう。
その上で、社員の描くビジョンもきちんと受け止めてあげることです。
以上の話は実はとても重要なポイントです。
つまり、コミュニケーションとはサブシステムのひとつには過ぎないとはいいつつも、組織行動の大前提であるアウトプットとインプットを揃える上でなくてはならないものでもあるということです。

―コミュニケーションをとる際の留意点について。

コミュニケーションの大前提は、各自の共通点を見つけることではなく違いを見つけあうことです。つまり、組織内部にいかに葛藤を作り出せるか、いかに真剣な討議を行えるかが重要になります。
そのためにまず大切なのは、各人の認知の相違点の明確化を討議のスタートにすることです。
人間は大体同じだという思い違いから「なぜこちらのいうことがわからないのだ」という問題が発生するのです。
代理店合併には失敗も相当多くみられますよね。
皆、合併後はどのような代理店像でありたいか話し合っていますが、それぞれの代理店の違いを本気で究明しあったケースはほぼ皆無のはずです。
合併が失敗したケースは間違いなく、自分たちの違いを明確にしないまま「私たちの方向性は結構同じだよね」で済まし、肝心なところをぼやかしています。
そうではなく、「なぜあなたはこうしたやり方をしてきたのか」「なぜそうした考え方に至ったのか」というように互いに究明し合いながら、考え方の違いを掘り下げていくことで、合併後の新たな文化、理念といったアウトプットがみえてくるようになります。
これが本当のコミュニケーションです。
そしてこれは、社員間での日常の活動でもまったく同じです。

―日本人は葛藤を伴ったコミュニケーションを嫌がることが多いのでは。

本当のコミュニケーションとは客観性を求めず互いの主観をぶつけ合う葛藤の中でコンセンサス(主観と主観の間の新たな客観性)を見出すという、非常にドロドロとしたものです。
しかし、ここまですることで初めて、自分たちが変えるべき本質が何であるかに気づきます。
代理店が合併する場合なら、互いの違う点を究明するためにそれこそけんか腰になるくらいにまで話し合い、それを乗り越えることで初めて本当のアウトプットが揃うようになります。

―最後に。

代理店をはじめ保険業界に携わる人たちすべきことが多く、つい目先の業務にとらわれがちです。そこに消費者とのギャップが生じます。
ですから、まずは自分のこと、自分たちの組織のことをきちんと見つめてもらいたいと思っています。

―ありがとうございました。